算数が苦手だった子供は中学入学後も数学で苦しむ傾向があります。
そして、中学1年生で習う一次方程式は、数学が苦手な子供にとっては大きな壁なんですよね。
ウチの娘は小学1年生の繰り上がり繰り下がり計算で躓いたくらい算数が苦手でした。しかも長期間の不登校中に勉強しなかったため、高校入学間近の今になってようやく一次方程式の勉強を始めたところです。
でも、一次方程式の基本的な問題さえ解き方が分からず、手が止まってしまうのです。あまりにも勉強が進まなかったので、先日娘と一緒に解いてみました。すると、一次方程式以前の基本が全然理解できてないことが分かったのです。
一次方程式がわからない!困った我が家のケース
一次方程式が分からない場合は、それ以前の算数や数学の理解度が足りないケースが多いです。そのため、スモールステップで方程式の理解を行うと同時に、理解不足の単元へ戻って復習しましょう。
ウチの娘の場合は数年間のブランクがあるし、元々算数が苦手で理解が遅いのですよね。そんなことから、小学校算数を完全に取りこぼした状態です。もうすぐ高校入学なのでやむを得ず最低限の学びしかできずに中学数学突入しているため、こうなっても仕方ないのです。
とはいえ、今やっている一次方程式は最低限理解していきたいし、足りない部分もここで補充していく必要があるので、娘が諦めてしまわないようサポートしていかなきゃなあ、と考えました。
(現在、勉強のベースは進学予定のサポート校での個別指導です。そこで出る宿題や「すらら」を自宅学習しているのですが、理解不十分なので家では私がサポートしないと手が止まったままになってしまうのです。)
娘が理解不足だったのは、私が気づいただけで以下の6項目ありました。
(2)「正負の数」
(3)「等式」の概念
(4)「方程式」の概念
(5)「等式の性質」の概念
(6)分数計算
一次方程式は、数学が出来る人にとってはさほど難しい内容ではありません。でも、算数や数学の基本が集約されている単元なので、基本が身についていないと解けないのです。
文字式の概念・正負の数
中学1年生の数学では一次方程式の前に、文字式について学習します。
その文字式を学習している段階から、おぼろげに危機感はありました。
というのも、家で宿題を解いている際の手の止まり方を見ると、

えっ、そんな簡単な問題が分からないんだ・・・!?
とショックを受けたのですよね。
どんな問題かというと、
例えばこの問題では、同類項を計算すれば良いので、答えは次の通りになります。
でも、娘には最初解けなかったのです。その理由は以下の2つ。
・同じ文字同士の計算では、その前にある符号もセットで考えること(上の例では「5a」でなく「-5a」として考えること)を理解できてない。
このレベルで躓いているため、次のような「文字式で分配法則の要素が加わる」問題になると、ますます手に負えません。
これは、次のようにカッコを外してから同じ文字項同士を計算します。
=2a+4b-5a+5b
=-3a+9b
中学1年生の最初の段階で正負の数について学習して、「-」×「-」=「+」と理解しているはずなのに、ここではその知識が吹っ飛んでしまったようです。
(というか、娘の場合は本質的な部分が理解できないと関連性がない、という認識になってしまうため、このような事態になることも多いのです。
この辺については、最初に文字項のイメージが湧き辛いため、イラストでイメージ作りしてから始めました。
娘の場合、「x」「y」のような文字に対して見慣れないので抵抗感がありました。ですので、イメージしやすいよう、飼っているセキセイインコのイラストを「x」の代わりに描き、式を具体的にイメージしやすいようにして式の意味を理解させていきました。
ただ、こういうやり方だと手間がかかってしまうので、□や△など(抵抗感のない文字代わりの記号)でも良いと思います。(式を具体的にイメージできるのであれば、最初から「x」や「y」でやる方が良いです。)
正負の数・・・数字の前の符号を一緒に考えて計算する。
分配法則・・・分配法則の仕組みを再度確認して、演習問題の復習
分配法則については、問題集に書いてあった以下の図の上段「○、□、△」でも分かりにくかったので、下図のように絵(ミカン、リンゴ、数字)で書いて娘に説明しました。
等式の概念・方程式の概念
「等式」の概念が理解できていないと、方程式の計算をする際に解答の書き方が分からず困ることになります。
また、方程式は何か不明な文字が入っている等式のことです。「方程式を解く」のは、その不明な文字の値を答えるということであり、「正体不明な文字=数字」という形式で答えることになります。(例えば、「x=3」など。)
ウチの娘の場合は等式の概念が分かっていなかったため、方程式で左辺と右辺のバランスを維持しながら解いていくことを理解していませんでした。
具体的には、
【問題例】
5x+1=6
【娘の誤解答】
5x+1=6
6-1=5
1 (←答えのつもり。)
【正しい書き方】
・2段目に「5x=6-1」または「5x+1-1=6-1」と書くべき。
・3段目に「x=1」と書くべき。
あまりにも逸脱した書き方だったので、

そのやり方だとテストで×にされること多いの。
だから、きちんと書いた方が良いよ。
と言ったのですが、聞き入れてくれませんでした。(母、そもそも数学をどうやって娘に教えたら良いのか分かってないので、「きちんと書く」としか言葉が出てこないのです。)
元々娘は理屈が納得できない場合にはテコでもやらない傾向があるので、「×にされるからきちんと書け」と言っても根本的な理由が分からないので動きようがないのですよね。
また、方程式の答え方である「x=数字」についても、娘は最初「数字」だけしか書いていませんでした。
一次方程式と移項
一次方程式の解き方は、等式の性質を利用する方法を学んだ後に、移項する方法で解くようです。でも、勉強遅れがあるとある程度すっ飛ばして学んでいく必要があるせいか、娘は早い段階で「移項」を学んでいました。
移項の考え方で必要な知識としては以下の2つを押さえればOKと言われています。
- 左に文字式、右に数字を集めること
- 「=」を跨ぐ時に符号が変わる
そして娘は、

移項は(サポート校の)先生に教えてもらったから分かっているよ!
と言うけど、実際に計算させてみると途中で止まってしまうのです。
【計算過程】x=3+8 (←移項による方法)
この計算過程は分かるけど、次のパターンの計算過程だと理解できないのです。
下の方法は「等式の性質」を利用した解き方です。両辺に「8」を足すことで左辺の「-8」を相殺しているのですね。
また、別の問題ですが、
という問題では、次のように
と両辺を3で割るのが理解できませんでした。
右辺から左辺への移項
そして、娘の頭の固さに唖然としたのが次の問題です。
このように、文字が右辺にある場合、どう解けば良いのか分からず混乱してしまうのです。

だって、右に「x」があると、答えが出せないんだもん!

えっ、単に「x」を右辺から左辺へ移項すれば良いだけの問題だよ?
なぜ出来ないの?
娘は、移項は「左辺から右辺へ行うもの」という認識になっていたのです。そして、数字だけの移項ならできるけど、文字を含む項を移項するイメージが想像できないのです。
ということは、
やはり等式の性質を全く理解していない、
というか、
そもそも「=」の意味分かってないよね?
という感覚のようでした。
ところで、上でお話しした「移項の考え方」については、色々調べていて知ったのですが、数学の先生によって賛否両論のようですね。
私自身は数学が得意科目だったので、移項におけるポイント2点、
・左に文字式、右に数字を集めること
・「=」を跨ぐ時に符号が変わる
については当然の認識であり、これさえ覚えれば方程式は完璧、と思っていたのですが、この解法を丸暗記してはいけないという先生もいるのだとか。「解法を丸暗記するのでなく、等式の性質を理解した上で、省略するなら移項という方法があるよ」程度の内容なのだそうです。
言い換えると、等式の性質を十分体得した段階で自然に移項による解法を選ぶものであり、「=」を跨ぐ時(左辺から右辺に飛ぶ、右辺から左辺に飛ぶ時)に符号が変わる理由が分からない状態なら、もっと等式の性質を身につけるまで演習すべきなのです。
等式の性質が分かっていれば、左右両方に同じ数を足したり引いたりするからプラスマイナスが変わることが一目瞭然なはずです。
以上のことを含めた形で、娘が理解しやすいようイラスト方程式で解いたのが次の画像です。
娘の場合、実感がないと数式の意味が理解できないので、やはり飼っているインコの体重等を使った方程式がイメージしやすいだろう、と考えて描いたものです。
シンプルな普通の方程式よりは食いつきが良かったのですが、これが身につくにはまだまだ時間がかかりそうです。ただ、方程式を解く途中式の書き方や、その途中式で「=」を中央に揃える等の予備知識はこれで教えることができました。
分数計算
小学校の算数で分数計算をきちんと理解できていれば楽に計算できたはずですが、分数計算が不十分なままだと方程式で分数計算等が出た場合に解き方が分からず止まることがあります。
このような問題の場合は、等式の性質により両辺を3倍して解きます。
でも、娘はこの考え方が分からずずっと固まった状態でした。
「最終的に『x=数字』の形にするためにはどうすれば良いか」がスムーズに分かるためには小学校の分数計算を地道に復習するしかなさそうです(。-_-。)

そんなの、やってられないわ~!
娘の場合はスピードが遅くて人の2倍時間がかかるのに。
ということで、できるだけ中学校の単元の中で理解を促したいと考えました。そして、

そうだ!もっと細かく説明しよう!
1つ1つの手順をじっくり解かせてみよう!
と思い立ち、かなり粘り強く説明しつつ、娘に解かせてみました。1つ1つのスモールステップを解かせ、そこで間違った場合には間違いを指摘し、なぜ間違ったか、どうすれば正しい答えになるのかを説明して時間をかけて解いたのです。
イメージする力が乏しい子供の場合、他人が説明しただけでは理解できない可能性が高いです。その場合は自分でやってみて腑に落ちる経験が必要です。
時間はかかりますが、できるだけスモールステップにして、じっくり見守ることが重要です。
すると、娘の理解が少し進みました。娘の理解した中から出てきた言葉が、下図の最上段赤枠部分(「逆数をかける・・・」)です。
そのための考え方として、下図三段目以降の方法で話しながら理解を促していきました。
数学的なセンスがある子供なら、このようなことは先生や親が教えなくても自然に身についていくでしょうけど、娘のような、イメージするのが苦手・数学的なセンスが無さそう、という性質の場合にはかなりじっくりスモールステップで問題を解いていくことが必要でしょう。
一次方程式を超スモールステップで解いてみた
以上のことを家で復習した後に、娘が別の一次方程式の問題に取り組んでみました。
でも、まだ一人では解けませんでしたorz
そこで、娘の間違いを指摘しつつ、解き方を説明したものをご紹介します。
下の画像前半部分は、娘の間違いを含んだ解き方です。そのため、多くの人には参考にならないかもしれません。ただ、娘と同じような箇所で間違える子供もいるし、中には正しい解き方をそのまま受け入れられない子供もいるので、そのような特性なら参考になるはずです。
以上ですが、すごく手間のかかる解き方ですよね。
そして、正しい解き方が出来る子供なら僅か2行で済む問題なのですが、数学が苦手な子供の場合はここまでしないと理解できない可能性もある・・・ということを理解しておく方が良いかもしれません。
ちなみに、最後の方で出てきた「天秤ばかり」は、以下の商品です。
小さい子供向けの知育玩具なのですが(爆)
娘の場合、小学校から不登校になったせいか、理科の授業を受けたことがありません。ですので、天秤ばかりを見たことも使ったこともないのです。等式を実感として掴んでいないのも、こういう実体験が乏しいせいかもしれません。なので、リアルなイメージを持つためにも何か良い天秤がないかと探したところ、こちらの商品が見つかったので即買ってしまいました。
中に入ってるカードは幼稚園から小学校低学年向けなので使っていませんが、重りである数字(1~10)と19匹のカエルは天秤を体感するには非常に良い、楽しいアイテムです。
娘の使い方はかなり脱線しています。等式の性質(加減乗除4つ)を一緒に操作して確認した後は、家で飼っているセキセイインコを天秤に乗せて、反対側に何を何個置けばバランスが良くなるのか等を確認したりして遊んでます。
ただ、この商品を中学生レベルの子供に購入するかは悩ましい問題でしょう。実際に長く使えるとは思えないのですよね。
とはいえ、我が家の場合は買って良かったです。娘は天秤ばかりを初めて見て感動していたし、かなり楽しんでいる様子でした。ですので、遊びを通じて本来の目的である方程式の理解に多少は繋がっていくことを期待して、娘の遊びをじっくり見守っているところです。
さいごに
正直言って、娘は数学が苦手なのでこの先もどこまで理解するかは分かりません。でも、苦手なりに、スローペースであっても勉強していく姿勢は大切にしたいし、少しでも理解したという喜びは感じて欲しいと願ってます。
我が家のように子供にとことん付き合うのは労力が必要です。ここまでやるのか、という気もしますし参考にならない部分もあるかもしれません。でも、ちょっとでも「なんでウチの子は数学が苦手なんだろう」と嘆くなら、一度じっくりお子さんの取り組みを観察してみると何かしらの手立てができるかもしれません。ですので、何かの参考にしていただければ幸いです。
★以下のページは一次方程式を娘に教える際にとても参考になりました。他の単元についても複数記事があるので悩んでいる場合にはおすすめです。
→参考:中1「1次方程式」でつまずく原因と解決法① 導入
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