特別支援級(知的障害学級)の授業カリキュラムは通常級に比べて簡単です。
例えば、中学校の数学は小学校低学年レベルだし、英語も”How are you?”などの会話程度しかやりません。
学校によっては生徒のレベルに応じて個別対応してくれるところもあるようですが、娘が進学した中学やその周辺学区の中学では一律同じような内容でした。
元々そういう内容とは聞いていたものの、中学校で娘や他の生徒の様子を見ていると疑問が生じてきました。

なぜ支援級はこういう授業カリキュラムなんだろう?
もっと通常級に近い勉強をさせても良いんじゃない?
でも、子供の成長過程を見ていくと、通常級と同じ勉強をさせるのは難しいのだろう、という気持ちになりました。
特別支援級の授業はどんな内容なの?
特別支援級(知的障害学級)では中学校レベルの授業はしないし、できません。
「特別支援級は個別対応してくれるのではないか」と思う人もいるでしょう。
確かに、個別の指導計画は策定してくれます。そして、それに沿った支援をしてくれます。
でも、完全な個別対応ではありません。支援級という少人数クラスにおいて「集団からはみ出ないように、そのための支援をしてくれる」という感じなんですよね。
そして、これも地域によって異なるかもしれませんが、支援級のうち知的障害学級の場合には、高校進学は想定されていないのが一般的です。特別支援学校へ進学するという想定で、教育委員会も中学校も生徒指導を行っています。
だから、中学校で学ぶ内容は特別支援学校と同じレベルで構わないという解釈になるんですよね。どうせ高校進学しないのだし、支援学校では高校のような難しい勉強をしないため、中学校でも高校入学準備的な学びが必要ないのです。
特別支援級を選ぶ理由と学校側の目的の大きなズレとは
発達障害のある家庭では、子供に個別支援が必要だからという理由で特別支援級を選びますよね。
でも、単純にそれだけで選ぶとミスマッチになる可能性があります。
というのも、家庭が特別支援級を選ぶ理由と、中学校側の考える特別支援級のあり方は違うのです。支援級では「将来の就労へ向けて身辺自立しましょう」というスタンスになっています。
もちろん、日常生活を自分の力でしっかりできるようになるのは重要ですが、そこに重きを置いてばかりいると勉強は二の次になります。そして、支援級の場合、極端なことに、「中学レベルの勉強はどうせ理解できないし、しなくていい」という解釈になっているのですよね。
また、進学先は特別支援学校のみを対象としている中学校が多いです。
ですので、支援学校へ進学しない(または進学する資格がない)生徒が個別支援目的で通うと、授業内容が合わずに困る可能性が高いのです。
特別支援学校を否定するわけではないけど、特別支援学校は基本的に、療育手帳や障害者手帳を取得している子供が進学する学校です。
発達障害児の場合、知的障害がないと手帳を取得できません。(ただ、知的障害でないアスペルガーや高機能自閉症の場合、地域や子供の状態によっては手帳を取得できるケースがあり、その場合には特別支援学校に進学することは可能になります。)
娘の場合は、手帳は取得しているものの(筆記試験を拒否する傾向があるので知的障害レベルしかWISC判定でないため)、特別支援学校のような環境は苦手なので進学先には向きません。(支援学校は大人数で、聴覚過敏や触覚過敏などが酷い娘には騒がしい環境に適合できないのです。)
そうなると、進学するなら高等学校ということになりますよね。
でも、高等学校に進学するなら、中学校卒業レベルの勉強をしていることが必要となります。
このような場合はどうすれば良いのでしょうか。
特別支援級から高校進学するには?
支援級から高校進学するのであれば、学力や内申点を考慮しない高校を選ぶ必要があります。
通信制高校などでは無試験で入学できるところもあります。そして、入学後に小学校や中学校の勉強からスタートしてくれる学校もあります。
とはいえ、無試験入学できたとしても、実際に高校で勉強しなきゃいけなくなるのですから、後でまとめてやるよりも、現時点から少しずつ勉強を始めれば、その方が子供にとっても(じっくり学べるので)都合が良いはずです。
それに、もし、中学入学時から少しずつでもいいので勉強していけば、自分が本当に勉強ができないのかどうかが分かります。そして、勉強が嫌だと感じたなら、高校進学は難しそうだから、支援学校や普通科以外の選択肢を考えなければならない、と自分自身でもっとじっくり考えられるはずです。
特別支援級から高校進学した先輩方の勉強方法は?
私は娘が中学入学後、1年半以上付き添い登校していました(母子分離不安のため)。そのため、娘の様子やクラスの子供達の勉強している姿などをずっと見学することができました。
中学によって生徒の特性なども異なるでしょうけど(当然、娘の中学校でもその年によって生徒の特性も異なりますし)、娘の通った中学校では知的障害学級でも知的障害認定されている生徒は少なかったです。半数以上は「勉強が苦手で支援級に通っている」ような雰囲気だと思われました。
(手帳を取得しているのも半分程度だったと思います。)

そうなると、先輩方はどこに進学するの?
と気になっていたのですが、結論としては、公立のチャレンジスクールやエンカレッジドスクール、通信制高校など、勉強遅れがあっても問題ない高校を選んでいました。
でも学校では高校進学へ向けた授業がありません。

では、どうやって勉強するの?
一部の先輩方(3年生)を見ていると、国語や数学のような少人数(最大4人)の授業の際に中学1年生レベルの問題を解いていた人もいました。ちなみに、国語や数学は週3、4回程度授業がありますが、支援級では授業の多くが行事でつぶれたり、その後の作文の授業などになってしまうこともあり、毎週コンスタントに週3、4回行っているわけではありません。
ですので、話を聞くと、放課後に塾通いをしているとのことでした。
また、その翌年の少人数授業については、受験生である3年生も1,2年と混ざって小学校レベルの授業内容に取り組んでいたため、もしかしたら、生徒の特性に応じて少人数クラスを組んだり、授業内容を変えていたのかもしれません。
いずれにせよ、中学校側では、高校進学へ向けた授業は行わないのが基本とのことでした。これも最初から中学校で言われていたことですが、支援級では「高校進学希望の場合は自己責任になるので、塾に通わせたりしてご自身で勉強させてください。」という話だったんですよね。
特別支援級では数学を勉強できない。どうすれば良いの?
ということで、娘は高校進学希望だったのですが、学校では数学や英語などの主要5教科が中学校で勉強できません。
だったらどうすれば良いのか、と悩みましたが、学校の先生に言われた通り、学校以外で勉強するしかないだろう、という結論になりました。
まあ、元々娘の場合は一対一の個別授業じゃないと指示が通りにくい特性があるので塾や家庭教師が必須だと思ってたし、当然の流れだったんですよね。
でも、実際に中学生になり個別指導塾に通ったのですが、予想外に上手くいかず焦りました。

個別指導なら理解できるだろうと思ってたのに・・・。
評判の良い先生だと聞いていたのに全然理解できないなんて!?
娘がなぜ理解できていないか、どこで躓いているかを理解できない先生だと、いくら一対一で教えても娘の脳と心にヒットしないのです。
★参考記事→発達障害児は個別指導塾なら成績が伸びる?娘が通って気付いたこと
ということで、個別指導塾での様子を見て悩みましたし、学校での数学や国語の授業の様子を見ても悩みました。
でも、ウチの娘は確かに勉強を理解するのが大変でしたが、知的障害学級の他の生徒もそれぞれ、娘とは違った特性だけど、それぞれ勉強を理解するのが大変な様子だったんですよね。そして、

知的障害学級の生徒に中学生レベルの勉強を教えるのは至難の業だわ!
と痛感しました。
ちなみに、ようやく最近になって中学1年生の一次方程式を勉強しているのですが、なかなか理解が進まず大変でした。まあ、これも特性だけの問題ではないのですけどね。小学校からの勉強の積み上げができていないという理由も大きいのです。
★参考記事→一次方程式がわからない!移項や等式の性質で苦労した過程を暴露。
勉強できない子供でも理解するのが大きな喜びになる
特別支援級のスタンスは、上でお話ししたように「勉強はできなくてもいい。自立できるよう就労に向けて努力するべき。」という感じです。
子供の実情を知らない頃は、支援級の方向性としては、とても良いものだと単純に思い込んでいました。でも今は、このスタンスだと子供の可能性を狭めてしまうのではないか、大人の価値観の押しつけではないかという疑問が湧いています。
「発達障害児は勉強できない。馬鹿だ。」と思う人もいます。私自身も娘が発達障害と知ってから、何年もそう思い込んで落ち込みましたし、卑下していました。
でも、数年前にある人に、
と言われました。その当時はその言葉を全然分かっていませんでしたが、その後娘が本当に時間がかかりながらもジワジワ成長していくのを見て、ようやく実感できるようになりました。
そして、勉強についても、ものすごく時間がかかるけれど少しずつ理解できることも分かってきました。
確かに、人の何倍も時間はかかります。娘の場合は、頭の回転の速い子供よりも10倍以上時間がかかっているかもしれません。
しかも、1つの角度から教えるだけでは理解してくれません。様々な角度から何度も言い方を変え、やり方を変え、という繰り返しをして初めて

そうか。この問題は、このように解けばいいのね!
と腑に落ちることも多いです。
でも、理解すると自信がつくんですよね。些細な問題であっても、自分で解けるようになったことがとても嬉しい、と実感していました。
人間は、新しい物事を知り、身につけることが楽しいと感じる生き物なのです。
だから、できることなら、少しでもいいから支援級でも勉強を教えて欲しかったな、と思うのです。
でも、娘の数学の理解の遅さを目の当たりにすると、このような授業を中学校で行うのは無理だなあとも思います。中学校の先生の人数も足りないし、それだけ根気よく教える時間もないし。
なによりも、日本の現在の教育方針は、全員一律の指導方法であり、個別支援を掲げる支援級であってもやはり、一律指導の中に組み込む形でしか指導できないから。1人1人躓くポイントが違うのに、先生が生徒1人1人に合わせて指導するなんて無理なんですよね。とても残念なのですが。
それでも・・・中学校に「もっと勉強を教えてほしい」と訴えるのもお門違いだと分かっていますが、勉強は「どうせ出来ないから教えない・やらない」でなく、少しずつ、ほんの少しの基本だけで良いので「最初から諦めずに教える、教わる、自分でやってみる」方法をやってもらえたら、生徒1人1人が理解する喜びを味わえるだろうに、と思うのです。
さいごに
中学校の支援級(知的障害学級)では特別支援学校と同じような授業内容です。
とても簡単だし、通常級と比べるとかなり乖離しているため、高校進学を考えている場合にはやめた方が良いというのが私の個人的見解です。
でも、個別支援を受けるためにはどうしても支援級に在籍しなければならない、という人もいますよね。その場合、中学校で勉強についてどこまで支援してくれるのかをきちんと聞いて相互理解しておく必要があります。
そして、中学校の勉強だけで足りなければ塾や家庭教師などの利用が必要になる可能性があるでしょう。
今の教育制度上、支援級の場合には個別支援も限度があるので、学校で線引きされたらそれ以上の支援をお願いするのは難しい気がします。
特に、我が家の場合は発達障害特性がかなり強いし、理解も非常にゆっくりなので学校の先生方にお願いするのは無理だと最初から諦めていましたが、実際に私自身が娘に勉強を教えた時に忍耐を強いられたので、発達障害特性があると指導する側は本当に大変なんだな、と痛感しました。
ですが、子供というのは頭脳の差はあれども、何か新しい物事が理解できると、とても嬉しいものです。そして、学校で何かを学ぶというのはこの積み重ねであり、嬉しいことの積み重ねになるべきです。
ですので、子供達が嬉しい積み重ねができるよう、支援級であっても新しい物事を学ぶ機会が少しでもあれば、と願っています。
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