就学相談の判定が不服な場合に覆すのは可能でしょうか。
我が家では娘が中学進学する際に情緒障害学級を希望したのですが、最終的に支援学校判定が出てしまいました。
今回は、就学相談で不服があった我が家がどう考え、教育委員会とどのようなやり取りをしたか等、中学進学にあたり散々悩んだことをまとめました。
就学相談の判定が2パターン出た我が家のケース
実は我が家では、中学進学にあたって就学相談を2回受けています。
これは引越しが原因でした。6年生の11月に引っ越しして自治体が変わったため、引っ越し先の自治体で再度就学相談からスタートすることになってしまったからです。
そして、判定としては以下の2パターンが出ました。
(2)引越し後の自治体→知的障害学級希望したら、結果は特別支援学校。
(1)についてはあらかじめ覚悟していたので「仕方ない」と感じたのですが、(2)の支援学校という判定は想定外だったので衝撃を受けました。
この結果が出た理由としては、その自治体の教育委員会によって考え方の違いがあるからだと思います。
次に、引っ越し先での就学相談から判定までの流れについて順にお話しします。
就学相談 引っ越し先の場合
引っ越し先の就学相談については、引っ越した時期が11月下旬と遅かったこともあり、「前の自治体での就学相談の記録を使って簡単に済ませましょう」と教育委員会から言われました。
ですが、何故か手続きがなかなか進みませんでした。他のお子さん方の就学相談も重なって忙しい時期だからだったようです。
我が家としても、駄目元で私立中学受験するつもりで勉強した時期でもあり、教育委員会からの連絡が途絶えていることには特に心配していませんでした。
★私立中学受験についての詳しい内容は、以下の記事をご覧ください。
→発達障害で中学受験は可能?不登校の子供が挑戦して得たことは?
支援学校の見学と体験授業
2月初めに私立中学受験して不合格になったため、慌てて「就学相談を進めなきゃ!」と思い、教育委員会に電話をしたところ、「では、一度特別支援学校を見学しに行きましょう」と言われました。
内心、「特別支援学校を見学しても、娘は行かないだろうな」とは思ったのですが、この自治体では就学相談をする場合に必須の流れという話でしたので、見学することにしました。
そして、見学後には案の定、娘は「この学校に通うの?」と不安そうな表情になっていましたが、「いや、たぶん、学区の支援級だから大丈夫だよ」と言うとホッとした様子でした。
でも、教育委員会からは、見学後に「では、一度体験してみましょう」と言われ、約1週間後に半日予定を取り、2時間程度体験することになりました。これも、就学相談をする際の流れだとか。
(ちなみに、学区の支援級については、引っ越しを決めた時点で学校見学をして、支援級主任とも1時間程度面談していたため、就学相談のこの過程では完全にスルーという形になっていました。)
そして、予定通り別の日に2時間程度体験をしに行きました。
そこで感じたことは以下の通りです。
- 支援学校は広くてキレイで設備が整っている。【→潔癖症の娘には○】
- 支援学校は生徒の人数が多いし(小中高あるため)、障害の程度も様々ある。【→人数多すぎて娘には×】
(過敏のある娘が見学することから、その中では比較的軽度の発達障害で、おっとりした生徒がいる教室で体験させてくれたようです。) - 支援学校は支援級よりも1人の先生が担当する人数が少なくて1人1人への対応が丁寧。【→担当人数少ないので娘には○】
- 1人1人の状況に応じて個別対応してくれると言うけど、娘に合うかは不明。【→実際入学しないと分からないので△】
(母子分離が出来ていない状態なので、登校についても「配慮します」とか、給食を母と別メニューにするのが難しいことについても「配慮します」とは言われたけど、具体的にどう配慮してくれるのか分からず、実際どこまでやってくれるのかは信頼できるか分からないなあ・・・と感じました。)
この辺については、そもそも特別支援学校に入学する意思が無かったので、あまり深く相談しなくても問題ないか、という認識で考えてました。(ただ、こうした流れで教育委員会から支援学校の体験までさせられたということは、この時点でほぼ支援学校判定という流れだったのかもしれません。)
そして、娘に対して「体験授業を受けてどうだった?」と聞いたところ、

よく分からないよ~
とのこと。
まあ、娘が分からないと言うのも当然なんですよね。
というのも、娘の場合、小学校では支援級が嫌で不登校になったし、通常級には通いたくても勉強についていけるか不安で教室に入れなかったし。自分にとって学校がどんな存在だか分からないまま小学校生活6年間が終わるため、1回体験授業を受けた程度でどうだったかという感想を考えるのは難しいのです。
ただ、見学日と体験日、両日とも気になったのですが、娘には聴覚過敏や嗅覚過敏などがあるため、重度の障害者が大声を出したりすると、かなり怯える傾向が強いのです。そして、特別支援学校なので重度の生徒も数名います。障害の程度によってクラス編成がなされているという話だったので、授業での接点は多くないのかもしれませんが、それでも全体授業の時には関わることになるし、近くを通ると大声を聞くこともあり。
教室移動のたびに、警戒モードになってしまうのです。母子分離不安があるとはいえ、なるべく娘から離れて行動観察していたけど、警戒モードになった時には私の方を振り返って「どうしよう!?」という表情になっているし。
やっぱりこういう環境だと落ち着いて授業を受けるというのは無理なんだろう、という結論になっていました。
(支援学校はなぜか設備がすごく整っており、校舎もとてもきれいだったので、建物などの環境面では娘の感覚過敏でも問題なさそうだと感じたのですが、人的環境面での難しさを感じました。)
支援学校という判定の理由について
支援学校の見学と体験授業という流れを経たものの、全然興味が無かったので放置していたのですが、その後2週間弱程度で教育委員会から呼び出しがあり、娘と一緒に訪問したところ、

支援学校という判定になりました。
とのことでした。
判定の理由については、見学時に付き添いしてくれた若い担当者でなく、上役らしきおじいちゃんが威厳をもった語り口調で説明してくれました。結構くどくど説明を受けたのですが、要点としては以下のような3つの内容がありました。
(2)支援学級だと個別対応が難しいけど、支援学校だと個別対応が行き届く
(3)どっちみち(中学で支援学級を選んでも、支援学校を選んでも、)高等部は支援学校になるから早く環境に慣れた方が良いのではないか
以下、詳しくお話ししていきますが、教育委員会の説明を受けているうちに、ものすごく気が重くなりました。
母子分離不安がある以上、支援学級では手に余るのではないか
娘は2回目の不登校になった後、私から離れて行動することが一切無くなってしまったため、中学に通う意思はあっても、「いつから一人で通学できるか」を教育委員会に対して確約できませんでした。
そして、学校でも様々な過敏があるので何か苦手なものに近づいたらパニックを起こす等の可能性もあり、それを先生方に対処してもらうとなると、「手に余る」と言われてしまうと「その通りですね」としか言えません。
支援学級だと個別対応が難しいけど、支援学校だと個別対応が行き届く
ということで、教育委員会としては、自分の担当の中学に振り分けするのを躊躇するのだろうと感じました。ちなみに、「支援学校だと個別対応が行き届く」のは確かにその通りかもしれません。法律的にもそうなのだろうし。
・・・とは思ったのですが、でも、ウチの地域の場合、
特別支援級は、市立(=完全に教育委員会の管轄)。
ということで、

教育委員会の先生方は、どこまで支援学校のことを把握しているの?
という部分が気になってしまいました。
もの凄い猜疑心が湧いてきたのですが、これは、1回目と2回目の不登校の際にその地域の教育委員会と色々話したところ「支援級の不登校については教育委員会の担当でない」と門前払いされたのが原因です。
もし、教育委員会の言うことをそのまま鵜呑みにして支援学校に入学した場合、スムーズに娘が登校できれば良いのですが、もし不登校になったら、「支援学校はウチの管轄ではありませんので支援学校と話し合ってください」と言われそうな気がしたんですよね。
元々、支援学校に見学に行った時から、支援学校に娘が入学したら、1週間も経たずに不登校になるんじゃないか、という気がしていました。ですから、この部分については「支援学校の個別対応の方が本当に娘にとって良い結果になるのか」を考える必要がある、と感じました。
どっちみち高等部は支援学校になるから早く環境に慣れた方が良いのではないか
このタイトルは、教育委員会の上役さんの言葉はもう少しオブラートに包んであったような気がするのですが、色々話しているとこんな内容になるんだな、と解釈した言葉です。
中学校で支援級を選ぶ場合、住んでいる地域によって支援級の扱いが異なります。
地域によっては、知的障害学級であっても希望すれば普通高校に進学できるという話も聞きますが(SNS上で)、我が家でが過去に住んだ地域(4ヶ所)は全て、「中学校で知的障害学級を選んだ場合の進路は、支援学校の高等部のみ」というコースが出来上がっていました。
だからこそ、引っ越ししてフリースクールに通ったり、市立中学を受験したりして、普通高校を受験できる道筋を模索していたのですけど。残念なことに娘がそこに乗っかれなかったんですよね(T_T)

知的障害学級から普通高校に進学したケースは無いのでしょうか?
と聞いたところ、その地域では

知的障害学級の場合はカリキュラムが違って普通高校へ進学するための授業をやってないので、現実的にあり得ないんですよね。
という回答でした。「内申書を出してもらえるかどうか」以前の問題なんですよね。
ということで、

中学で支援級に通うと、必然的にこの支援学校を受験することになるんだし。(細かく言えば、職業系など特化した支援学校もあるけど)。どちらにしても、高等部はこの特別支援学校ですね。
というまとめになってしまいました(。-_-。)
支援学校と支援学級どっちが良いの?
「特別支援学校の方が支援級よりも1人1人への支援が手厚いから良い」
と言う人もいますし、その理由も分かります。
でも、合うか合わないかは子供1人1人違うんですよね。

個別支援が行き届いていると言うけど、先生方が娘の気持ちを汲み取って配慮してくれるのかなあ。(今までの学校は言うだけ詐欺だったし信用できない。)
あと、娘の可能性をどこまで見て、伸ばしてくれるのかなあ。
とかなり深く悩みました。
娘の場合、実際の運動機能も含めて処理速度についての凹が酷い上、鉛筆を持つのも苦手なため、WISCのような筆記テストは超苦手です。また、嫌がる傾向があるのでWISCの数値だけで見ると知的障害ゾーンになってしまいます。ただ、言語理解だけは普通なので、対面する限りでは知的障害とはならないのですよね。
そして、感覚過敏が酷いことから周囲のことをよく観察していて、常に人や物、建造物などに対する警戒が強いです。そのため、人数の多い支援学校だと個別対応以前の問題で精神疲労を起こす可能性が高いと感じていました。
実際、体験授業で全校マラソンする場面があったのですが、生徒の人数が多すぎて、混雑していた下駄箱周辺で生徒とすれ違うことが多くて怯えていたのです。距離感覚のない娘は生徒とすれ違うたびに緊張し、硬直して生徒が去るのを待っていたので、すごい行動が遅かったです。
また、先生に「こっちに来て」と呼ばれた際にはやはり生徒の人数が多すぎたので、そこに入りに行くことができず、出入口のところでボーッと突っ立っていましたし。
じゃあ、支援級ならこれらの問題を解消できるのか、というと、そうとは言えないのですが。ただし、3校目の小学校のように快く受け入れてくれる中学であれば、落ち着いて過ごせる可能性があるのではないか、という期待だけで考えてました。
(ネガティブ発想として、支援級でも不登校になる可能性は考えており、「どちらで不登校になった方がマシか」ということも想定した上での「支援級希望」だったのです。)
支援学校が嫌というのは親のエゴなの?
「特別支援学校に通う方が就職には有利だから、障がい者雇用の選択肢も考えるべき」と、小学校3年でWISCをやった時の医師や、感覚統合療法でお世話になっていた作業療法士には言われておりました。
また、昔やっていたブログ(今は閉鎖済)でも、「それだけ数値が低いなら支援学校に通って将来は作業所で働けばいい」と非難めいた言葉をもらったこともあります。
本当に、娘の言語理解が低かったら障がい者雇用の選択肢を受け入れる方が良いとは思うのです。でも娘の場合、WISCの他の数値は凹だらけなのに、言語理解だけは凡人程度(100前後)の数値が出ているし、娘に好意的な支援者との会話は普通に理解できているので、知的障害という感じではないのです。
そして、娘自身も年々自分の凹を気にするようになり、かつ、自分はなぜこういう環境(合わない・いつも周囲を気にしていなきゃいけない環境)で過ごさなきゃいけないのか、と悩むようになっているのです。こんな気持ちの娘を支援学校に入学させたら娘はどう感じるのだろうか、親として責任取れるのかと悩むのです。
以前の医師には「親が子供の道を正しく決めるべき」と言われましたけど、我が家の場合、娘は普段優柔不断で決定能力ないけど、元々頑固な特性なので、一度「嫌なものは嫌!」と思ったら絶対に譲らないんですよね。親が「こうしましょう」と言ったところで何一つ親の思い通りになんてならない。だから、「親が決めるべき」と言っても無理だし、娘の気持ちに寄り添っていくしかない、と考えてます。
就学相談の判定が不服な場合どうする?
ということで、家に持ち帰って夫と相談しました。更に、その場の感情だけで決めてはいけないと考え、一度冷静になり、1週間程度置いて、娘ともよく考えて決めることにしました。
就学相談の判定は教育委員会が出すのですが、「最終的には保護者の意向で結論を出す」ということになっているらしく。判定に不服な場合は、「嫌です」と言う権利だけはあるのです。
ただし、「嫌です」と言った場合、我が家の場合は「支援学級(知的障害学級)を希望する」ことになるのですが、実際に希望が通るかどうかは別問題になります。
ここからは、教育委員会の責任でなく、保護者の責任で入学したい(といっても学区の支援級しか選択肢はありません)学校の校長先生と支援級の主任に直接相談して許可を得る必要があるのです。
支援級や校長との面談
こんな説明を受けたのでどうなるか不安でしたが、とりあえず中学校にアポを取って、校長や支援級主任と面談をしました。
そして、その際に言われたのが、
「入学を受け入れるのは可能ですが、条件があります」
とのこと。
その条件は、
・お子さんのことで何かあった場合にサポートできること。
という2点でした。
この話を聞いて、

えっ・・・そんな簡単なことで良いの?
・・・と思ってしまいました。
というのも、1校目や2校目では、付き添い登校をすごく嫌がられたんですね。
1校目では、1人で登校できないのが普通じゃないから、早く1人で登校できるようにさせなきゃいけない、と少しずつ離れる練習をさせられたし。
2校目は転校後2ヶ月間だけは慣れるために付き添い登校して、常に教室の隅で見学していたのですが、生徒が私の方をチラチラ見て気にしてしまうため、常に煙たがられていました。そして、3ヶ月目になった段階で、「もうそろそろ一人で学校生活大丈夫でしょう」と言われて、登下校の際だけ付き添う形になったので。
そんな経緯があったので、今度の中学も1人で登校させなきゃいけないなあ、と思っていたのです。
でも、逆に「付き添って下さい」だったので、

付き添って問題ないのですか?
他の生徒に「何であのお母さんだけ付き添っているの!」と突っ込まれませんか?文句言われませんか?先生方が困りませんか?
と何度も確認してしまいました。
ちなみに、その時の支援級主任の言葉は、

もう子供じゃないのですから、文句を言う生徒はいません。興味が湧いたとしても、相手に失礼なので言わせませんよ。
とのこと。
これを聞いて、同じ支援級でも学校によって生徒のレベルが違うのだろうと感じました。まあ、小学校と中学校の年齢差もあるのでしょうけど、知的レベルが高い生徒が多いと感じました。
就学相談の判定を覆す
こうして、学区の支援級の条件として「付き添い登校」を提示されたのですが、これを受け入れないと許可を貰えないし、母子分離不安のある娘にとっては好意的な条件でもあるので、ほぼ即答で「お願いします」と言い、入学へ向けた話になりました。
と言っても、現実的には教育委員会に面談の報告を行い、教育委員会の方で学校側の確認も行った上で、中学の入学許可書の発行という流れになりました。
ただ、入学許可を得られたのが3月半ばなので、4月入学に向け、制服を作ったり、その他書類の記入や必要な物を揃えたりするのが忙しかったです。制服はこんな時期に注文して間に合うのか、と心配でしたが、公立中学の標準服はセミオーダー的になっているので、寸法さえ確認できれば、そして特注サイズでもない限り2週間程度で十分作れるのだとか。
本当にギリギリまで悩みましたが、とりあえず一区切りついてホッとしました。
教育委員会の反応とその後
教育委員会は就学相談で支援級などの判定を出すのですが、最終的には受け入れるかどうかは保護者次第なので、我が家のような展開もあるようです。
そして、意外だなあと思ったのが、その後の教育委員会の反応でした。
中学校に許可を貰ったことを報告したら、

良かったですねー♪♪♪
・・・と、今まで支援級を渋っていたのが嘘のような態度だったのです。
教育委員会の本音は分からないのですが、中学で直接許可を得たことで、何か問題があっても教育委員会側の責任にはならないことで安堵したのかなあ、と感じました。(これは、あくまでも私の想像です。)
確かに、後になってSNSなどで知ったのですが、中学校の支援級に通う場合、1人で登下校できるのは当然の条件という話もあるようですし。その観点からすると、母子分離不安のある娘の場合、支援級お断りされても仕方ないのですよね。
支援級(知的障害学級)入学というのは高校進学を考えると色々問題はあるけど、この時点で出来る限りの選択肢でした。
そして、更に意外だなあと思ったのが、この地域の教育委員会は結構こまめに活動していたのですよ。入学後には教育委員会主催で地域の小中学校の支援級での交流会を開催したり、地域の支援級を巡回訪問して生徒の様子を確認しに行くのです。
全国的にこれが一般的なのか分かりませんが、以前住んでいた地域ではこのような交流や巡回がなく全て学校の支援級任せになっていたので、それと比べるとしっかり仕事しているんだなあと感じたものです。
さいごに
もちろん、就学相談の判定や支援級などの決まり、教育方針等は自治体や学校によって異なるので、今回お話しした我が家の経験はそのまま参考にはできないかもしれません。
ですが、教育委員会の判定は一般論での判定だし、一般的な尺度に当てはまらない発達障害児にその判定が合うとは限りません。ですので、判定に疑問が浮かぶ場合は教育委員会に詳しい理由を確認して、子供にとっての最善は何かをじっくり考えてみましょう。
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